昔、私が生徒のことを褒めているときに、こんなことを言った先生がいました。
「渡邊さんは、いつも子どもを褒めすぎなんだよ。子どもたちは、社会に出たら、それほど褒められることがないのだから、今からそんなに褒めていたら癖になっちゃうし、打たれ弱くなっちゃうじゃないか・・・」本当にそうでしょうか?
国内チョーク業界のNo.1で、障害のある方を従業員の7割も雇用している日本理科学工業の大山泰宏会長から、以前に素敵なお話を伺いましたのでご紹介したいと思います。「渡邊さん、人間の究極の幸せは何だかわかりますか?」と質問をされ、しどろもどろになっている私に、にっこりと微笑んでこう教えてくださいました。「人間の究極の幸せとは、①人から愛されること ②人からほめられること ③人の役に立つこと ④人から必要とされることの4つなんですよ。先生の仕事は、生徒たちをたくさん褒めて、自信をつけさせることなのではないですかね。・・・」子どもたちは、小さいころから「これができるように、あれができるように、これをなくし、自己肯定感が非常に低くなってしまっているのではないかなと思っていました。自分のことが好きになれないと他人のことが認められなくなります。あの人が悪い、この人が悪いと仲間の攻撃が始まります。それに相手を攻撃しているうちは自分が攻撃されなくてすみますから、気持ち的にも楽ですよね。逆に自分に自信があり、人間性の高い人というのは、人の良いところに目がいきます。自分も頑張っているけれど、あの人はもっと頑張っているな。あの人のことを見習おう。そんなふうに、どんどん自分を高めていくことができます。自信のある人は、自分の中に一人尊敬できる人を持っています。尊敬できる人、つまり目標ができると、生き方が大きく変わってきます。あの人のようになりたい。あの人だったらこんな時どうするだろうか・・・。子ども達の一番身近にいる私たち大人が、子ども達のお手本にまずならなければいけないと強く感じています。また、自信のある人というのは、自分の中に太くて大きな柱(揺るぎない価値観)を持っています。そして、その柱を日々どんどん大きくさせていきます。他の人からも非難されたり、攻撃されてもびくともしない柱です。子どもたちの心の柱を太く、大きく育てていくためには、わたしたち大人が子どもたちの良いところをどんどん発見し、小さなことでもどんどん褒め、「自分って結構いいかも」「自分って少しは役に立ってるかも」という気持ちを最も大切なことだと私は信じています。子どものできないことに着目してしまうと、お互いに苦しくなって怒ることが多くなってしまいます。できることが増えて自信がついてくると、できなかったことができるようになるから不思議です。私たちの役割というのは、目の前にいる人を褒めて幸せにしてあげることなのではないかなと思います。